国際バカロレア教育では、3歳から12歳までを対象とした心身の発達を重視したプログラムのことを「PYP(Primary Years Programme)」とし、心身や社会性、感性の成長が著しいこの時期に「深い学び」を体得することは生涯学習の基礎を築く上で大変重要であると考えています。
本校は、2018年3月26日に学校教育法一条に規定される学校としては国内で2校目、茨城県では初の「PYP認定校」となりました。これにより、日本の小学校卒業資格を得ることができるのはもちろん、国際バカロレアのPYP認定校の卒業生としての資格も得ることができます。
本校では、小学1年生から5年生までを「PYP」と位置付け、日本の学習指導要領に国際的な教育プログラム学校教育を融合させた独自のカリキュラムを通して教科の学力はもちろん、教科の枠に捉われない思考力を身につけます。
なお、小学6年生は次の段階である「MYP(Middle Years Programme)」に属します。
教科の枠をこえた6つのテーマ
国際バカロレア教育におけるPYP(Primary Years Programme)の学びでは、子どもたちの身の回りにある課題や問題を題材とします。子どもたちは毎日の「探究」の時間を通して、以下の「教科の枠をこえた6つのテーマ」について探究的に解決策を考えていきます。
① Who we are
(私たちは誰なのか)
② Where we are in place and time
(私たちはどのような場所と時代にいるのか)
③ How we express ourselves
(私たちはどのように自分を表現するのか)
④ How the world works
(世界はどのような仕組みになっているのか)
⑤ How we organize ourselves
(私たちは自分たちをどう組織しているのか)
⑥ Sharing the planet
(この地球を共有するということ)
これらの「教科の枠をこえた6つのテーマ」は、1つのテーマについておよそ2か月かけて取り組み、1年間をかけてすべてのテーマを学習します。 そして学年が1つ上がると、同じテーマについて今度は別の観点や切り口から探究します。同じテーマに基づいて前年度より高度で発展的な内容や題材に取り組むことで、系統的な学びを可能にします。
このように、課題や問題を1つの教科のこととして捉えるのではなく、教科横断的に、また継続的に探究し、学びを深めていくところに本校独自の特徴があります。
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国際バカロレア教育では、普遍的で汎用的な見方や考え方(概念)のことを「セントラルアイデア(Central Idea)」と呼んでいます。
そして、教科の枠をこえた6つのテーマに、各学年の成長過程において理解してほしいセントラルアイデアを組み込んだ授業が「探究」です。
探究的な問いに対して、具体的な題材に関する知識やスキルを獲得しながら、これらに共通したセントラルアイデアを理解し、活用できるよう自ら考え、自ら概念的な理解にたどりつく学びを行います。
小学生のうちから具体と抽象を行き来する思考力を育むことで、物事の本質を考えられる思考力が育まれます。
◇ 活用事例
Sharing the planet(この地球を共有するということ)」というテーマに対し、2学年ではセントラルアイデアを「自然には脅威と恩恵がある」としています。
身近な「雪」を題材に探究活動を行ったときの事例を紹介します。 子どもたちにとって、雪は雪合戦やスキーなどに欠かせない、楽しいもの・嬉しいものというイメージがあります。 一方で、授業で雪の重さにより倒壊した家屋や交通が麻痺する様子を知り、怖いもの・恐ろしいものという認識も生まれます。
そこで、2学年のフィールドワーク(集団宿泊学習)では、積雪地帯である新潟県南魚沼市に向かい、実際に高く積もった雪に触れ、地域の方から日々の生活についてお話を聞きます。 子どもたちは、自身が生活している環境との違いに喜び、そして戸惑いますが、雪との共生について体感することになります。
また、3学年も同様に南魚沼市でフィールドワークを行いますが、このときの季節は初秋です。稲作について学習する中で、雪の下で約6ヶ月間寝かせてつくる越冬野菜の存在などから雪による恩恵を知り、雪との共生について、さらに理解を深めることができます。 |
国際バカロレア教育では、1つの教科に留まらずどの教科でも活用できるような、ものの見方や考え方のことを「キーコンセプト(Key Concepts)」と呼び、本校では探究活動や授業で物事を考える観点として活用しています。
◇ 活用事例
1年生では「Where we are in place and time(私たちはどのような場所と時代にいるのか)」をテーマに、「家」を題材にした探究活動に取り組みました。
「家」といっても、ものの見方や考え方をまだ習得していないため、 「家のことを調べよう」とただ投げかけても、学びは深まるどころか停滞してしまいます。 そこで、キーコンセプトの1つである「Form(特徴)」の観点から調べてもらうと、「屋根の瓦が黒い家」「周りに石の壁がある低い家」「壁がオレンジの家」…という違いに気がつくようになりました。
次に「Function(役割・働き)」の観点から調べてもらうと、「黒い屋根瓦は雪を溶かしやすい」「石垣や低層の家屋は台風に強い」…ということが明らかになりました。
最後に「Perspective(視点・見方)」の観点から学びを総括させると、「もしも暑い地域に家を建てるなら、白い壁で風通しの良い家にしたい」…というように、自分なりの考察ができるようになりました。
キーコンセプトは学年や教科に関わらず活用することができるため、日々の学習活動の中で、自然と主体的なものの見方、考え方を身につけるために大切な切り口となっています。 |
国際バカロレア教育では、「学び方を学ぶことが教育である」という考えに基づいて、子どもたちが生涯にわたって主体的に学んでいくために必要となる態度やスキルを示しています。
それらのスキルはATL(Approches to Learning)と呼ばれ、特定の教科に限らない汎用的なもので、望ましい人間関係や学習習慣を育み、維持するために必要となるものです。
例えば、国語の学習においては読み書きを学び、算数の学習においては計算を学び、読むスキル、書くスキル、計算するスキルなどの「教科のスキル」を学習します。
これらは、1人の人間が思考し、学習を深め、幅広い知見を身につけるうえで欠かせないスキルです。 一方、国際バカロレア教育の定義するスキルは、いわゆる基本技能を超えた、教科の枠を超えたスキルです。
すべての教科それぞれに関連した、また教科の枠を超えたこれらの内容は、さまざまな要素が複雑に入 り組んだ児童の毎日の生活を支えるために必要なものといえます。
◇ 活用事例
3年生の社会科「店ではたらく人」の学習単元における校外学習では、近くのスーパーマーケットの見学に行きます。そして、見学してきたことを新聞にまとめます。
子どもたちは「店ではたらく人」の学習で不思議に思ったこと・疑問を解決するために店員さんにインタビューをしますが、そこで必要になるのが「コミュニケーションスキル」です。
また、店内にはたくさんのお客さんがいます。マナー良く見学するためには「ソーシャルスキル」が必要になります。 そして、インタビューから得られた情報を整理し、取捨選択して新聞にまとめる際には「リサーチスキル」が必要になります。
このように1つの学習活動においても複数のスキルを活用し、学ぶ内容に捉われることのない「学び方」を学びます。 |