国際バカロレアMYPとは
国際バカロレア教育では、11歳から16歳までを対象としたプログラムのことを「MYP(Middle Years Programme)」としています。 MYPにおいては、総合的な知的興味を持ち、生徒が適切な判断力を養いながら、 広がる関心や自己と世界に対する認識を探究する機会に対する理解を深めることを大切にしています。
教科の学習においては、「概念」と「グローバルな文脈」の要素が組み込まれます(※1)。 これにより、ただ知識を暗記するのではなく、知識同士、あるいは知識と経験を結び付けながら探究することを可能にします。 また、教科の学習だけでなく「行動・奉仕活動」「パーソナルプロジェクト」に取り組む機会が設定されます。 自身の行動に基づくこれらの学びは、自身の関心とあり方(アイデンティティ)を深め、挑戦する大切な機会となります。
本校では、6~10年生(小6~中等4)までを「MYP」と位置付け、様々な概念的思考を通して国際的な視野の素地を身につけます。
(※1)”概念”は「力」「システム」「変化」など包括的で大きなアイデアを、”グローバルな文脈”は「持続可能性と発展」など現実社会の状況を指します。
学びの特色
MYPの教育プログラムは、思考的にも精神的にも大きく発達する5年間をかけて取り組むため、学びの重点となる要素が多く存在します。
1つ目は、「概念」を用いたカリキュラムを構成し、学習者の理解を最大限に引き出すことです。
この要素はPYPにおいても意識されていることで、具体的な事象を断片的に記憶してテストで記述するための「知識」ではなく、具体的な事象を通して見えてくる共通の特徴、事象間の関係性、本質的な内容まで、問いを用いながら考えていきます。こうして得られた概念を他の領域でも関連性を見出し、自ら適用できるようになると、一見関係のない事象においても理解を深めることができます。
2つ目は、教科に依存しない、生涯学習者としてのスキルを身につけることです。
MYPでは、各教科における基礎学力の定着に向けて専門性の高い学びに取り組みます。そして、教科特有のスキルだけでなく、PYPから続く、教科の基本技能をこえた5つのスキルをさらに研鑽します。
■ Research | あらゆることを様々なツールを駆使して行いまとめる調査スキル |
■ Thinking | 批判的、創造的、転移(他の事象にパターンを適用)の各思考スキル |
■ Communication | 話す、聞く、読む、書くなど様々なコミュニケーションスキル |
■ Social | 仲間と協働して問題を解決していく社会性スキル |
■ Self management | 組織の中における個人、感情面、振り返りの自己管理スキル |
これらのスキルは、どの教科においても生徒が磨いていくものとして、それぞれの授業の中に意識的に設計されます。さらに、教科以外の場面でも総合学習や学校行事においてこれらのスキルを駆使し、その成果を振り返りながら身につけることで、実社会でも活用することができる、自分自身の生涯の強みとなります。
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生徒たちは、PYPのうちから自分たちが学校で学んで理解したことを実際の行動に移す経験を積み重ね、理解を深める学びを意識して学習を進めてきました。探究して、行動して、振り返るという国際バカロレアが大切にしているサイクルは、MYPでも不可欠な要素です。
特にMYPでは、個人や集団で奉仕活動を行い、学んだことを活かす行動によって社会に貢献することを大切に、サービスラーニング(教室などで得た知識を地域社会において社会貢献活動を行うこと)を実践します。こうした活動自体が再び自分たちの学びにつながり、新たな自己意識の芽生え、責任感の育成を後押しします。
9年生(中等3)では、仲間とともに奉仕活動をプロジェクトとして実践し、活動報告として発表することを計画しています。
コミュニティープロジェクトとは、MYPの学びの一つとして、1名または3名までのグループで行う奉仕活動です。本校では、9年生(中等3)に取り組み、活動報告を発表することを計画しています。
コミュニティープロジェクトの特徴は、「コミュニティー」に注目することです。コミュニティーとは、空間、時間、関係などのフレームにより、個々が接近していることを指します。
そこで、本プロジェクトでは、それぞれのコミュニティーにはどのようなニーズがあるのかを考え、そのニーズに応えるために行動することを通じて、持続的で深い探究を行います。体験的な学びを通じて、コミュニティーに対して奉仕を行う権利と責任を模索することを目的としており、本校でのグループ活動や探究活動で培ってきたソーシャルスキルや探究心が発揮される活動です。
国際バカロレア(IB)のMYPでは、それまで自分が身につけてきたスキルや知識を発揮する、「プロジェクト学習」を行います。開智望ではその中でも、個人の興味関心に基づいて活動する「パーソナルプロジェクト(PP)」を行います。PPは、開智学園が行う「個人探究」とも重なるところが多く、MYP、そして探究の「集大成」と言える活動です。
(実践例)途上国におけるワクチン開発・普及の現状について調査・インタビュー・募金活動等を行い、日本国内の人々へ情報を伝えるために自主出版本を作成しました。
カリキュラム
MYPでは、学校全体のカリキュラム計画を立てることを大切にしています。
一つひとつの学習が単元ごとに区切られてしまうのではなく、学年横断的要素と教科横断的要素を含むことで、MYPに所属する5年間の学びにおいて一貫性を持った授業を展開します。
開智学園のこれまでの実績をベースとした中高一貫教育の実践を取り入れ、MYPのカリキュラムである以下の8つの教科における学習を進めます。
言語と文学(英語・国語)
言語の習得(英語・国語)
個人と社会(地理・歴史・公民)
数学
理科(生物・化学・物理・地学)
保健体育
芸術(美術・音楽)
デザイン
本校は学校教育法第一条に定められたいわゆる一条校であるため、上記教科に文部科学省の定める教育課程を融合した独自のカリキュラムを編成します。
そして、プロジェクト型の学習を積極的に展開しながら評価に繋げます。
評価の項目やレベルをルーブリックとして設定し、生徒自身も高いレベルを目指して成果物の制作に取り組み、自己評価と他者評価をすり合わせながら、さらにその先の学びにおける課題点の認識まで丁寧に振り返りを行い、学習を進めていきます。
実社会につながる学び「6つのグローバルな文脈」
PYPで探究する6つの教科の枠をこえたテーマを発展させ、MYPにおいても6つのグローバルな文脈を意識しながら学習を進めます。国際的な視野を持つ人材を育成するために、社会そのものを「学びの場」と捉え、様々な事柄を以下の切り口から概念的に思考します。
① PYP:Who we are
(私たちは誰なのか)
⇒ MYP:Identities and relationships
(アイデンティティーと関係性)
② PYP:Where we are in place and time
(私たちはどのような場所と時代にいるのか)
⇒ MYP:Orientation in space and time
(空間的時間的位置づけ)
様々な切り口から自分を理解する、自己理解の探究です。
地理的、歴史的な視点から関連付けて理解を深める、時間と空間の探究です。
③ PYP:How we express ourselves
(私たちはどのように自分を表現するのか)
⇒ MYP:Personal and cultural expression
(個人的表現と文化的表現)
④ PYP:How the world works
(世界はどのような仕組みになっているのか)
⇒ MYP:Scientific and technical innovation
(科学技術の革新)
様々な教科を通じて多様な方法や技法、価値観や感情に触れる、表現の探究です。
高度で最新のSTEM教育に触れながら社会の変化を理解する、科学技術の探究です。
⑤ PYP:How we organize ourselves
(私たちは自分たちをどう組織しているのか)
⇒ MYP:Globalization and sustainability
(グローバル化と持続可能性)
⑥ PYP:Sharing the planet
(この地球を共有するということ)
⇒ MYP:Fairness and development
(公平性と発展)
自分たちが創り出すコミュニティと様々な事柄の相互関連性について学ぶ、組織の探究です。
限りある資源の分配と争いのない社会について学ぶ、開発や平和の探究です。